本物の指導者
プロ野球界では、今季、長年活躍して来た青木宣親さんと和田毅さんが引退されました。
二人の共通点は、早稲田大学の出身ということです。その他にも、二人と同世代で、早稲田大学には、
鳥谷敬さんなどその後プロで活躍する選手が多数いました。
彼らを育てのは、当時、早稲田大学の野球部監督を務めていた野村徹さんです。
野球好きの方は「野村監督」と言えばプロ野球の野村哲也さんを思い浮かべる方も多いでしょうが、
野村徹さんはアマチュア野球界の名将です。
早稲田大学野球部では、1999年から在任6年で優勝5回、黄金時代を到来させました。
幸運なことに、その野村徹さんに、私が大阪大学4年生の時に、ご指導頂く機会に恵まれました。
当時、大阪大学野球部は、1部リーグにあがったところ、スポーツ推薦もない、コーチもいないような状況でした。
そんな大学にお越して頂けたのは奇跡的なことのように感じます。
野村さんにグランドにお越し頂いたのは数回だけですが、その中の一回は打撃指導をして頂くことになり、
まずは1番バッターから順番に一人一人見て行こう、ということで、
当時1番バッターを務めていた私のバッティングを見て頂くことになりました。
始まったら、大変でした。基礎が全く出来ていない私を見て、一から・根本から作り直す、という感じでした。
野村さんから真剣な熱のこもった眼差しと言葉を受けながらトスをあげて頂き打ち返す。
何度も何度も繰返し繰返し指導して頂き、自らもバットを握って身振り手振りも使って教えて頂きました。
当時70歳近くだったのではないかと思いますが、とてもその様な年齢には思えない、力強さ・エネルギー量でした。
ワンピース風に言えば、野村さんからは確実に「覇気」が出ていました。1球たりとも気が抜けず全力で振り続ける。
しかし、言われた通りにやろうとするものの、それまで長年染み着いていた悪い癖が抜けずなかなか出来ない。
一向に上達しなかったのですが、漸く変化が表れ始めたら、既に1~2時間経っていたのではないでしょうか。
手は既にボロボロ。練習時間の終わりが来て、その日の打撃指導は私一人で終わってしまいました…
他の部員達はその間私のスイングを見ているだけ。皆も指導してもらいたかっただろうに、本当に悪いことをしました。
しかし、その熱血指導のお陰で、今までになく力強い打球を打てるようになっていきました。
野村さんが後ろから「打球の角度が高い、ボール半分だけ上を打ってライナーを打て」と指示が出る。
そう言われても簡単に出来ないよ…と思いながらもやってみると、今まで打ったことがないような鋭いライナーが飛びました。
当時、野村さんからご指導頂き、「これが本物の指導者なんだな」と感じたことを思い出します。
あれだけ指導しても一向に上達する気配がない私に対して、諦める素振りなど一切見せず、
ひたすらに、全身全霊で、向き合って頂きました。
プロに行くような選手を育てた人からすれば、それはそれは酷いレベルだったはずです。
しかし、そんなことは関係なく、もの凄いエネルギ―量を注いで頂きました。
その気迫は確実に私に伝わっていました。これは私が勝手に感じていたことですが、
自分自身の心の奥底に向かい、「お前はできるようになる」と言われ続けているような感覚でした。
D-COMPASSは教育サービスを届ける会社です。野村さんという本物の指導者にご指導頂いたことを原点に、
一人一人に向き合い、心の奥底に全身全霊でエネルギーを注ぐ、その様な姿勢で取り組みたいと思います。